HOME → コラム・レポート→ 組織と人材のマネジメントサイクル第2回 経営理念と組織文化

理念は企業の羅針盤

企業理念は、企業の存在意義や経営層が持つ経営に対する基本的な考え方をまとめたもので、企業経営や組織の基本像(原点)を示すものである。さらに企業理念は、全社員が遵守すべき基準として具体化したものの「行動規範」、環境変化を踏まえて中長期的に目指すべき姿を描いたものの「ビジョン」とつながっていく。

企業理念は、企業が果たすべき使命、事業活動の目的や基本姿勢を規定するものであり、これには、ステークホルダー(顧客、株主、取引先、地域社会など)に対して、他社とは異なる自社の存在目的・意義を提示する対外的な側面と、組織の構成員(社員等)に対して、どのような考え方に基づいて業務を遂行すべきかを認識させる対内的な側面がある。

企業理念は、長期にわたって受け継がれるような一定の不変性が求められるため、抽象的になりがちであるが、抽象度を高めすぎると、具体性に欠けるため、社員の業務判断基準や業務遂行の拠り所として機能しなくなり、風化してしまうという問題が生じる。そのため、企業理念は、あまり抽象的、観念的にしすぎることなく、親しみやすい言葉で表現することが求められる。

社員が持つべき心構えや起こすべき行動の方針をわかりやすく表現した行動規範を定めることで、企業理念を実際の企業活動に反映しやすくなる。また、企業は企業理念をアイデンティティとして守りながらも、その時々の環境変化に適合していかなければならない。したがって、特定の環境下で自社がどういう方向を目指すべきなのか、環境が変化するたびに、不変的な企業理念を読み換えるための「ビジョン」が必要になってくる。ビジョンは、企業の中長期経営計画や事業戦略の具体的な方針を指し示すものである。

すべての経営活動は企業理念に基づいたもの

各種規定や諸制度はもちろん経営戦略や事業戦略、人事評価や賞罰等、社長をはじめとする経営陣の言動など、すべてが一貫して経営理念やビジョンに基づいていなければならない。
優良企業は例外なく経営者から一般社員まで共通の価値観(企業理念・ビジョン・行動規範等)が浸透しており、全社員がこれに基づいて行動している。

人材マネジメントに企業理念は不可欠

当然、企業がとる人事政策にも経営理念やビジョンが反映されなければならない。これらに加えてもう一つ重要な要素は「守るべき組織文化」である。職務記述書や業務マニュアルに基づく職務形態が発展途上のわが国では、この組織文化が大きく組織構成員に影響する。そのため、人材マネジメントを構築するにあたって、人事制度の基本理念を別途策定することがシステム設計上有効である。人事制度基本理念が存在することによって、組織構成員は働きやすくなる。目指すべき人物像と成果に対する報奨が分かりやすいからである。

企業活動を担う人材の育成および個人・組織の活性化のための対応策、仕事に「働きがい」や「生きがい」を求め、キャリア形成により就労意識の変化への対応を図る、といった2つの柱を人事制度に据えるとよいだろう。

個々人が専門能力を有したプロフェッショナルとして自立し、目標の明確化と納得性の高い人事評価による、組織と人材のスパイラルアップを目指した施策が、持続可能な組織経営の基盤になるのである。
(第3回に続く)

2011.12.08  武田英一  (組織|全社改革|人事・人材開発|教育研修)

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